女性の月経は本当に同期するのか

投稿者: | 2024-01-19

「ウイルスはいない」というと、必ずと言うほど「じゃあ、どうして病気が伝染するんだ?」という質問が出ます。そういう「伝染」を説明するために、バイオレゾナンスや形態形成場 (モルフォジェネティク・フィールド) などが取り沙汰され、「女性が一緒に生活すると月経が同期する」 というのが例として挙げられることがよくあります。私はこれを聞くたびに、イラッとしていました。それは、私自身、母も含めて女性と同じ屋根の下で生活したことはありますが、月経が同期するという経験をしたことがなかったし、研究の結果そういう事実はないというのをラジオ番組で以前に聞いたことがあったからです。これに関して前々からひとこと言いたいと思っていたので、記事を書くことにしました。

こういう、いかにもありそうな話は特に、何も考えずに受け入れてしまうのではなく、立ち止まって検証してみる必要があります。

まず、何をもって「同期した」、「重なった」と定義するか。同じ日に始まらないとダメなのか、1 日でも重なっていればいいのか。どれぐらいの期間重なっていたら同期したというのか。2、3 回連続して重なればいいのか、半年間、1 年間重ならないとダメなのか。

次に、一緒に生活する、とはどういうことか。1 つ屋根の下に暮らしていれば、実際に過ごす時間が少なくてもいいのか、それとも多くの時間を一緒に過ごす必要があるのか。

さらに、科学的に証明するためには、「一緒に生活する」ということを独立変数として、その他の変数を取り除かなくてはなりません。でも、たとえば他に会う人の影響をなくすために、2 人の女性をどこかに閉じ込めて実験するわけにもいきません。それ以外にも、食事、ストレス、健康状態、元々の体質などなど、月経に影響するであろう要素はものすごくたくさんあります。それらをすべて同じにすることは現実的にできません。

そして、一緒にいる時間が多い 2 人の女性の月経が同期したとして、それを 2 人が一緒にいることが原因だと結論付けていいのか、という問題もあります。相関関係があったとしても、それに因果関係があるとはこの時点では断定できません。それを証明するには、さらにその因果関係を証明するような研究が必要となってきますが、私にはそれをどうやったら証明できるのかわかりません。

これに関して実際に研究が行われたのは 1971 年が最初だったようなのですが (http://www.mum.org/mensyn.PDF)、その研究では寮にすむ大学生を対象に月経の始まる日を半年ほど記録してもらい、一緒の部屋に住んでいる人、仲がよく一緒に生活する時間が長い人の情報を分析して、半年後に始まる日が近づいていたから、同期する方向に進んでいるということで、同期するのだと結論付けています。その後、人間や動物を対象としたさまざまな研究が行われ、同期するというものもあれば、同期しないというものもあり、同期するという研究の結果を再現できたり再現できなかったりもしているようです。そして、(おそらく 2017 年頃に行われた) オックスフォード大学のスマートフォン アプリを使った調査では、同期しているとは考えにくい、というのが結論のようでした。

科学者でない私みたいな者から見てもツッコミどころがいっぱいのこの「仮説」を、ウイルスに関してはものすごく論理的に的確に問題を指摘している、私が尊敬する人々が、事実であるかのように繰り返し言ったりするのです。こういうことに対してはなぜ甘くなってしまうのか…。

女性の心理として、月経が重なると、同士であるような、親しさを証明しているような気がして、嬉しい気持ちになったりすることもあると思います。だから、同期するということを信じたい。でも、自分が信じたいからといって、それを安易に信じるのでは、真実を見つけ出すことから離れてしまいます。有り得そうな話ほど、注意が必要です。

同じような感じで、笑いが伝染するというようなことも言われます。私が訳した動画にも出てきた例は、電車の中で誰かが笑ったらみんな笑いだしたというもの。でも、それは「伝染」なのでしょうか。確かに、誰かが笑っていたら笑いたくなることはあります。でも、近くで誰かが笑っているからと言って、常に笑いたくなるでしょうか。たとえばレストランの隣のテーブルで誰かがケタケタ笑っていても、別に笑いたいとは思わないような気がします。人同士が影響を与え合うことはあると思いますし、人の気配や気分を何も言われなくても感じることはあると思います。でもそれは、(これはあくまで私の仮説ですが、) 人の何かが自分の中で共鳴して反応しているのであって、「伝染」とは違うものだと思います。

そもそも、病気などが伝染するという考え方自体が間違っていると私は思うのです。伝染していると思って見るから伝染しているように見えるのではないでしょうか。伝染しているように見えるからと、それを説明するものを探すのではなく、伝染という考えを一度捨ててみる必要があると思います。同じところにいる人に同じような症状が現れたとしたら、まず疑ってみる必要があるのは環境です。その人々が共有する環境に何か原因となるものがないか。それがあまりにも無視されているように思います。

 

参考記事:

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